「“アイデア”を“カタチ”にする会社」という長期ビジョンのもと、組織の強化や企業理念体系の見直しを実施し、社会の存続に貢献できる企業 を目指します。

柴尾 雅春

代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)

代表取締役社長 兼 CEOがインタビューに応じている様子。

インタビュー日:2024年8月/更新:2025年9月

  • 本記事は、2024年度発信のCEOメッセージをベースに、2025年8月時点の内容を踏まえて更新したものです


自動車産業の大変革を含め、社会課題をチャンスと捉える

2023年のCEO就任以来、より長期的な視点に立ち、ニフコがこの先数十年以上にわたり、サステナブルに成長を続けていくには何をどうすればいいのか、ESGを念頭に置きつつ、さまざまな試みに取り組み始めています。自動車産業の大変革も含め、これから起こりうるさまざまな社会課題をチャンスと捉え、新事業やビジネスの創出などにより社会に貢献していきます。

そこでニフコの社会的使命として掲げた長期ビジョンが「“アイデア”を“カタチ”にする会社」です。アイデアというと製品(モノ)のアイデアを思い浮かべがちで、ニフコも長年多種多様なアイデアを製品化して世の中に供給してきました。ここでいう「アイデア」とは、社会課題の解決を目指し、「コト」や「サービス」に関連する事業コンセプトを具体的なカタチにすることを指します。ニフコは、この取り組みを通じて、自社の成長と社会貢献を両立させる事業を展開していきます。

世代別に3つの階層に分け、強固な組織づくりを推進

代表取締役社長 兼 CEOがインタビューに応じている様子。

この長期ビジョンを実現するには、経営層から従業員まで全員が当事者意識を持ち、次世代・次々世代へとバトンを渡していく必要があります。ニフコは日本のみならず北米・欧州・東南アジア、中国、韓国と6つのリージョンでグローバルに展開している会社であり、全リージョンで同じビジョンを共有することが肝要です。

そのために始めた取り組みのひとつが、3つの階層を設けて強い組織を作ることであり、第1階層は各リージョンのトップマネジメント層、第2階層は各国拠点のトップ層、第3階層は40歳前後の中堅層が参加します。各階層とも、目安として約20名で構成し、適宜参加者を入れ替えながら、それぞれ年2回程度のミーティングを実施します。第1階層は、将来の夢を描く役割を担い、会社が将来的にどのような姿であることが望ましいのかを議論し、そのための指針を策定します。2025年度は、日本・欧州・中国で既に3回のミーティングを実施し、10年先の2035年を見据えた長期経営計画について議論を重ね、ほぼ方向性が固まりつつあります。第2階層は、2024年度から2026年度の中期経営計画におけるコミットメント達成を使命とし、課題や目標達成のための施策について議論します。2025年度は、地域的な特性が異なる欧米とアジアに分けて、2回のミーティングを実施しています。第3階層は、将来、自分たち中堅層が主役となる、つまりトップマネジメントや経営層として活躍する自分たちの姿を想像し、どのような会社でありたいかを議論します。2025年度は、名古屋・インドネシア・タイとグローバルにわたり3回のミーティングを実施済みです。

こうしたミーティングを通じて各層が情報共有し、どこのリージョンの誰が何に強いか、誰に働きかけるとビジネスがスムーズに進むかを把握できるようになれば、本当の意味で組織が強化されるのではないかと考えています。また、3つの階層の中でも若手が参加する第3階層のミーティングは、基本的に英語を公用語としています。英語にすることにより、日本語圏では獲得できないビジネスや人材の情報にたどり着けるのではないかという目論見です。企業にとって最も重要な資源は、やはり“人”であると考えています。日本のみならず世界のどこかに眠っている良い人材を掘り起こすことが成長の必須条件です。

企業理念体系を見直し、従業員エンゲージメントを高める

代表取締役社長 兼 CEOがインタビューに応じている様子。

強い組織づくりには、従業員エンゲージメントの向上が不可欠です。そのために、ニフコでは企業理念体系の見直しに取り組みました。下図に示すように、各従業員が個々に持つ「My Purpose(マイパーパス)」を起点に据えている点が特徴です。
誰もが「自分はこれをするために生まれてきた」「こういうことをして社会に貢献したい」といった価値観や人生観を持っているはずです。その価値観と会社の「Purpose(存在意義)」が重なる部分がマイパーパスであり、言い換えれば、会社の中で自分の価値観をどのように活かせるかを起点にすべてが始まります。
この仕組みにより、従業員一人ひとりが主体的に「どうやって会社に貢献しようか」と考えるようになることを期待しています。

ニフコグループ企業理念を示す図。左側は同心円構造で、外側から『Purpose(存在意義)』『Mission(使命)』『Values(価値観)』『My Purpose(個人の目的)』と中心に向かって配置されている。右側は2つの円が重なったベン図で、左の円が『Purpose』、右の円が『個人が人生で大切にしている価値観(人生観)』とあり、交差部分に『My Purpose』が示されている。

情報発信も非常に重要だと感じています。社内への発信と社外への発信のいずれも重視しています。社内でいうと、中期経営計画にしてもマイパーパスにしても、従業員に深く理解してもらうためには国内外問わず、私が直接足を運んで説明をしたほうがより伝わります。何度も顔を合わせるうちに次第に議論の中身も深まり、経営の舵取りのヒントも得られます。

一方、社外にニフコの取り組みを発信すれば、企業価値を上げることにつながります。新製品の発信や外部との価値共創などにも力を入れ、ニフコのブランド強化(ブランディング)にも注力していきます。ニフコはBtoB企業であるため、自動車業界以外での一般的な認知度はあまり高くありません。だからこそ、私たちはブランディング活動を通じて、より多くの方々にニフコという存在とその魅力を知っていただきたいと考えています。その一環として、2025年度にはプロ野球・パ・リーグ6球団とのオフィシャルスポンサー契約を結び、球場やメディアを通じて幅広い層にニフコのブランドを発信しています。こうしたスポーツ協賛を通じて、「ニフコ=挑戦と成長を支える企業」というブランドイメージの定着を図っています。

このように認知度を高めることは、優れた人材との新たな出会いにもつながると信じています。より多くの人に「ニフコという会社がある」ということを知っていただくことで、私たちの価値観に共感してくれる人材を確保しやすくなり、それが次にご説明する新事業の創出にも大きく貢献すると確信しています。

中期経営計画における3つの戦略ポイント

今後3カ年(2024年度〜2026年度)の中期経営計画は、3つの戦略コンセプトに基づき策定しました。

1.成長投資

2021年度~2023年度(2024年3月期)の中期経営計画は、課題があった子会社の譲渡により棄損した部分はあったものの概ね達成できましたが、資金にゆとりがあるにも関わらず実現できなかったのが成長投資でした。しかし新中期経営計画のスタートとなる2024年度には、北米・韓国OEM市場に向けたメキシコ新工場へ190億円の投資を実施しました。2025年度も引き続き同規模の成長投資を実施し、自前主義にはこだわらずスタートアップ企業への出資やM&A活動により新事業の立ち上げをしっかりと行っていきます。

2.グローカル経営

ニフコはこれまで日本で開発した製品を世界で販売するというビジネスモデルを展開してきましたが、それだけでは持続的な成長は望めません。現地(ローカル)の特性やニーズに応じた事業にスピード感を持って対応してもらうために、各リージョンのトップに一定の権限を委譲することを推進しています。現地主導のビジネス創出、つまり自動車産業の中での新ビジネスの立ち上げも狙っています。2024年度には、将来的なポテンシャルの高い中資ビジネスの拡大と、成長に鈍化が見られる東南アジアでの工場集約などを実施しました。1つ目の成長投資で触れた新事業と、グローカル経営においてのビジネス創出を2本柱に据え、成長の推進力とします。

3.従業員エンゲージメントの向上

向上策のひとつが前述のマイパーパスの策定です。役員対象のマイパーパス策定ワークショップで私自身も体験しましたが、従業員が実際に自身のマイパーパスと会社のパーパスのつながりを考え、会社でどのように自分の人生観や価値観が活かせるか方向性を見つけてもらいます。また、ダイバーシティも一層推進し、組織の活性化と次世代の人材をしっかり確保していきます。特に、海外拠点の中でもタイでは、従業員のエンゲージメントを高めるようなオフィスづくりや多彩なイベントを積極的に行っており、こうした取り組みも参考にしながら、グローバル全体で従業員エンゲージメント向上を実現していきます。


このほか、カーボン・ニュートラルの実現に向けた取り組みや環境保全活動も一層推進していきます。ニフコの主力製品は自動車に使用するプラスチック部品です。樹脂製品であるため一見すると環境対策に反するように思われがちですが、これにより完成車の重量が軽減され燃費が向上し、トータルで見るとCO₂の排出量削減につながる効果があります。間接的な貢献ではありますが、今後もビジネスと一体化した中で環境保全策を模索していきます。また、モノづくりには電力の消費が不可欠ですが、太陽光パネルの導入などを通じてCO₂の排出量およびコストの削減を図っていきます。

ステークホルダーへのメッセージ

ニフコはビジネスを通じて社会課題の解決に努め、社会の存続に貢献できる会社でありたいと願っています。そのためには当然ながら、ニフコ自体が将来にわたり存続できる企業でなければなりません。ニフコは今後もサステナブルな成長を維持・推進していきます。