ニフコらしさを追求し、長期ビジョンの実現と
真のグローバル企業として持続的な成長に取り組んでいきます。

柴尾 雅春

代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)


サステナブルな成長を続けていくために

3ヶ年ローリング型の中期経営計画"Nifco Global Growth Strategy"の最終年度となる節目の2023年6月、サステナブルな成長と価値創造を追求する使命を胸に、私はCEOに就任いたしました。新型コロナウイルスが5類に移行されたのを機に海外渡航を再開していますが、肌で感じるのは海外と日本の地政学的な違いです。日本は30年以上もデフレが続いており、その間にアメリカやアセアン諸国は大きな経済成長を続けてきました。この差は歴然としており、このままでは日本は世界に置いていかれるだろうと切実に感じています。早急に日本の企業や国民が自信を取り戻せるようにしなければなりません。このような環境下において、当社グループの存在意義、パーパスとして掲げた「小さな気づきと技術をつなぎ、心地よい生活と持続可能な社会を創造する」を実現していくために、瞬間的な成長ではなくサステナブルに成長することが大前提だと考えています。一方で、世界に追いつくためのホップ・ステップ・ジャンプできるようなチャレンジも必要であり、常に経営判断にバランスが求められ、確実に実績を上げることでサステナブルな成長を実感することができると考えています。

ビジネスモデルと一体化したESG経営

当社では、事業活動の推進によって社会課題を解決し企業価値向上につなげるESG経営を実践しています。自動車産業は、温室効果ガス排出削減のための厳しい環境規制や世界的なEV車へのシフトなど大きな変革期を迎えています。当社は、自動車部品の独立系サプライヤーとして、市場のマクロニーズやトレンドを捉え、「環境」「安全」「快適」をテーマに得意とする車両の軽量化、リサイクルしやすい部品の開発・提案をしてきました。この結果、自動車の燃費向上やリサイクル性の向上など、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点においても環境負荷低減に貢献していると考えています。しかし、まだ課題はあります。そのひとつが物流です。効率性を重視した物流方法では、どうしてもトラックの配送頻度が多くなります。今後は世界的な動向を踏まえて、輸送における効率性とCO2削減のバランスを考えた最適な提案をしていくことも必要だと感じています。
足元の製造現場では、材料ロスや廃棄物の削減に努め、再生可能エネルギーの活用なども積極的に進めています。これらの取り組みは環境貢献のみならず、収益性向上による競争力の強化につながるので、このような地道な活動をさらに増やしていきたと考えています。商品の研究開発、製造、販売でCO2排出量削減に貢献することが企業の役割ですし、環境課題の解決は成長のチャンスになります。
2022年度に特定したマテリアリティは、成長領域・競争力の強化として事業に直結する項目を選定開示しております。廃棄物ゼロ(サーキュラーエコノミー)への推進に関しては、グループ企業のシモンズが、ベッドメーカーとして初めて環境省の広域認定制度の認定を受けて東日本でベッドのリサイクルを始め、マットレスのマテリアルリサイクルに取り組んでいます。

事業面では、今期から2、3年かけて2つの重点施策に取り組みたいと考えております。もっとも注力していくのは新規事業です。経営戦略・事業戦略と一貫性のある新商品を開発し、タイムリーに市場投入していくことを徹底的に進めていきます。もうひとつが、バランスの取れた分配と成長への投資です。コロナ禍のこの数年間は海外を含めて投資を抑制してきました。今後は、M&Aを含めた成長投資を積極的に行っていきます。自動車領域における既存事業の強化による車両一台当たりの搭載金額拡大と、新規事業の開拓をバランスよく進め、企業価値の最大化を目指しています。
先に挙げた新規事業で価値創造の源泉となるのが人材です。当社グループでは従業員を「人的資本」であると考え、ダイバーシティ推進や働き方改革など、さまざまな施策を進めてきました。従業員が幸せや人生の楽しさを実現できるように待遇条件の改善とともに、個人と組織の成長を促すための機会提供や、仕事へのやりがいが感じられるエンゲージメントの高い職場環境を目指し、人的資本に関わる投資を進めています。

リージョナルマネジメントを強化

現中期経営計画では、2030年のあるべき姿として「存在感のあるグローバル企業として成長を続ける企業」を掲げました。現在の海外売上比率は約68%です。この状況を考えると、日本側ですべてをコントロールすることには限界があります。そこで地域ごとに最適化し、経営スピードアップを図るために日本、韓国、北米、欧州、東南アジア・インド、中国の6つの拠点でリージョナルマネジメントを強化しています。地域ごとに異なる事業環境や商習慣に合わせたバランスの取れた戦略を実行するために、本部と連携するハイブリッド型マネジメントの体制が定着しつつあります。これを継続的に実現するために海外拠点のトップのほとんどにローカル人材を採用しています。2022年9月に開催した海外拠点長会議から、2030年度を見据えた次の中期経営計画についてのディスカッションを始めました。地域が自立できる、マネジメントを実行・強化していきます。

ニフコらしさを追求した価値創造

お客様から「ニフコらしい」「ニフコらしくない」と言われることがあります。自分たちが感じる以上にマーケットの中で独自性やユニークさが認知されています。お客様やその先にある社会の課題を先回りして解決することに努める一方で、カスタマイズ商品ばかりでは非効率的ですから、ビジネスとしてしっかりと足場を作り上げていく商品を増やしていくことが必要です。自動車産業の普遍的なテーマである「環境」「安全」「快適」分野にしっかり適応しながら、これからも独自性のある商品でお客様に価値を認めていただき、その利益を次の提案や開発に投資し、それがさらにお客様の利益につながるような価値を創造していきたいと考えています。

ステークホルダーへのメッセージ

財務基盤を維持し企業価値を最大化することで、さまざまなステークホルダーの皆さまにバランスよくメリットを享受いただけると考えています。株主の皆さまには安定的な利益の還元を行っていきます。また2023年5月には中長期的な株主価値に対する当社グループ従業員のモチベーション向上を企図したインセンティブ・プランの導入を決定いたしました。株主・投資家の方々をはじめ、ステークホルダーの皆さまには、引き続き変わらぬご期待・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。