非財務的な価値が企業を左右する時代に。
ESG経営は、長期的な視点でのリスク低減、長期的企業価値の向上につながります。

矢内 俊樹

取締役専務執行役員
CFO(最高財務責任者) 兼 CSO(最高戦略責任者)


Q.22年度の振り返りと23年度の見通しについて聞かせてください。

2022年度の業績としては、連結売上高は前期比13.4%増の3,217億7千1百万円、営業利益は前期比12.8%増の344億3千9百万円となりました。為替の円安影響もありましたが、それを除いても過去最高を達成することができましたので、コロナ禍の影響をクリアしながら、しっかり数字は出せたと考えております。中期経営計画の指標については、為替を含め厳しく見ており、さまざまなリスクも織り込んだうえで、最終年度となる2025年度も収益性をさらに上げ、着実な達成を目指します。

Q.CFOとCSOを兼務することのメリットについてどのようにお考えですか。

新卒で当社に入社し、20代後半から30年近く経営企画の仕事をしてきました。その間、歴代社長の近くで、中期経営計画の策定、企業買収や撤退、新会社の設立といったポートフォリオマネジメント経営、さらに子会社の管理、IRとしては資本市場との対話を行ってきました。そういう意味で、広い視点から経営企画と財務の両面を見てきました。投資家は企業の財務価値だけでなく将来の戦略や企業カルチャーを重視します。特に外国人投資家にその傾向が強いように思います。財務とともにビジョンや戦略についても深く議論できることはメリットですし、それが株主の外国人比率の高さにもつながっているのかもしれません。

ESG経営が財務に与える影響と会社の成長戦略について聞かせてください。

ESG経営は、長期的な視点でのリスク低減になり、その結果、企業価値の向上につながるでしょうし、これからますます非財務的な価値が企業を左右するようになると考えます。世界的な潮流として、人材や知的財産、技術的なノウハウ、管理手法など、会社のさまざまなソフト面での強みが企業価値向上の重要な要素となるのです。
非財務面は数値化できない部分もありますが、会社の成長につなげていくためには見える化が必要です。人的資本であれば、どういうスキルを持った人材がどこにいるか、どんなポテンシャルで、どう育成していくか、もしくはその人の持っている経験やノウハウを会社のスキルとしてどう生かすかといったことを見える化することで、個人と組織の成長につながります。また当社の強み、弱みも含めて見える化をして、特に強みを積極的に成長につなげていき、かつ効率的に活用することで売上と利益ともに成長させることができます。
ESGは、当社や業界の価値向上にも結びつくようなやり方でなければなりません。目の前のお客様のことだけではなく、その先々のお客様、さらに社会を見据えて、期待を超える提案をして「そうきたか」と驚きを与えることが、ニフコらしさであり、そうあり続けて欲しいと願っています。これが継続的につながっていけば、お客様からヘルプデスクのように常にそばにいて欲しいと思っていただけます。それがニフコの付加価値であり、バリュークリエーションだと思います。
ガバナンス体制については、当社では取締役の過半数が社外取締役です。経営に違う目線が入ることで、いろいろな気づきがありますし、ガバナンスというルールがあることで会社の中に自浄作用が働きます。当社は会社が正しい方向に向かうための合意形成が行われており、ガバナンスが十分に機能していると考えています。

Q.今後の投資戦略について、どのように考えますか。

大きく変化する自動車市場の中で、オーガニックな成長を超える成長と企業価値の向上を目指すためには、自前主義だけでなく、長期的な視点から、分野を超えた連携や買収なども必要になります。無謀なリスクは避けなければなりませんが、取るべきリスクを取らないと、将来の果実は手に入りません。新しいチャレンジをするためにも財務基盤をしっかり固めて、常に魅力的な案件があれば、躊躇なくチャレンジできる準備をしておくことが私の使命です。
ROIC15%以上を目標としていますが、グローバル基準で考えるとまだ満足のいくものではありません。投資家は、日本だけでなく世界の銘柄に投資いたしますので、世界の中から選ばれる会社になるためにも企業価値向上に努めていきます。
先の見えないコロナ禍では、資金を少し手厚く準備していましたが、アフターコロナにおいては事業の成長に向けた使途、企業ステージに即した株主への還元とバランスのとれた使い方をしていきたいと思います。

Q.ステークホルダーにどのような価値を提供するのか、考えを聞かせてください。

多様なステークホルダーに対してバランスの取れた利益配分をしていくべきだと考えています。株主の皆さまへの貢献としては、配当、自社株買い、企業価値向上の3つがあります。特に企業価値向上は株主にとってのメリットであることはもちろん、お客様、お取引先、従業員のメリットにもなります。さらに売上や利益が増えれば税金も払いますから公共、地域社会にも貢献できます。これからも企業価値の最大化に努め、すべてのステークホルダーの皆さまに貢献していきます。