プライム市場における情報開示要請に応じて、気候変動に関連するガバナンスの明確化や、リスクと機会の分析、リスク管理等の整備について検討を進めています。

ガバナンス

取締役会において、気候変動を含むサステナビリティに関する方針、戦略、計画、施策の策定、目標とすべき指標の審議および設定を行うとともに、進捗や成果を共有し、改善や新たな取り組みを決定し推進します。
また、取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。同委員会では、サステナビリティ全般に関する事項について諮問を行い、その結果を取締役会に助言・提言します。
取締役会で決議された同議案は、直接あるいは経営会議を通じて当社の各事業部門、およびグループ各社に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映されます。
その内容によっては取引先にも協力を要請しています。

戦略

国際的に推奨されるガイダンスによるシナリオ分析の手法で導かれる2021年から2040年までの環境の変化予測に対して、当社は気候変動に起因する事業リスクおよび機会の分析評価を行いました。そして、それらの結果を基に、それぞれのリスクや機会への取り組み方針を策定しました。

シナリオ分析の概要

対象範囲

グループ連結対象企業(ベッドおよび家具事業を除く)

時間軸

現在~2040年

シナリオ構築

  1. 地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えるシナリオ(1.5 ℃シナリオ)
    参照情報

    • IEA※1 WEO2021 NZE、SDSシナリオ

    • IPCC※2 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より
      SSP1-1.9,2.6

    • その他

  2. 地球の平均気温が産業革命以前の水準から4℃程度上昇するシナリオ(4℃シナリオ)
    参照情報

    • IEA WEO2021 STEPSシナリオ

    • IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より
      SSP2-4.5、SSP3-7.9、SSP5-8.5

    • A-PLAT S8 気候 RCP8.5

    • その他

  • ※1

    IEA
    International Energy Agency(国際エネルギー機関)。第1次石油危機後の1974年11月に、石油を中心としたエネルギーの安全保障を目的としOECD(経済協力開発機構)の枠内に設立された機関。現在は持続可能なエネルギー供給を目指し、気候変動の分析や省エネルギー政策、クリーンエネルギーの推進政策等に貢献。

  • ※2

    IPCC
    Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的として、1988年8月にWMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)により設立された政府間組織。気候変動に関する最新の科学的知見をまとめた報告書を作成。

気候変動に関連して想定される事業環境の変化

【1】 1.5℃シナリオ(気候変動への緩和)において想定される事業環境の変化

1.5℃シナリオでは、自然環境は2040年ごろに平均気温が現在より1℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の2倍程度になると言われています。その激甚化する風水害に対して政府の投資が増え、CO2排出量削減に向けたより厳しい基準が企業に迫られるようになる可能性があると言われています。
世界的に気候変動への対応が進むことにより、自動車は化石燃料を用いる内燃機関が減少し、電気エネルギーを使う自動車へのシフトが進むとともに、これまでの自動車メーカー以外の新規参入企業の存在感が増していく可能性があります。そうなった場合、顧客からは、化石資源を用いる内燃機関用の商品の発注が減り、電気エネルギーを使う自動車に必要な部品の発注が増えるとともに、環境負荷低減を前提に設計、製造された製品を求められることが多くなると考えられます。また、自動車のエンドユーザーの環境意識の高まりから、車の自己所有からシェアリングへのシフトが起こり、世界の自動車生産台数が減少する可能性があります。
調達、製造においては、炭素税の導入により原材料の調達価格が上がり、また顧客からの要請により再生プラスチック、バイオマスプラスチックなどの原材料への転換が増えていく可能性があります。風水害の激甚化によるサプライチェーン、製造施設などの被災の可能性が高くなり、その場合は、イレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が起こる可能性があります。

【2】 4℃シナリオ(気候変動への適応)において想定される事業環境の変化

4℃シナリオでは、自然環境は2040年ごろに平均気温が現在より2℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の4倍程度になると言われています。激甚化する風水害に対して政府の対策は強化される可能性があると言われています。気温上昇により、熱中症搬送者数は現在の2倍程度に増加するとともに、これまで少なかった蚊媒介の感染症なども増えていく可能性があります。
化石資源の価格およびエネルギー料金は上昇していく可能性があります。また、風水害の激甚化によるサプライチェーン、製造施設などの被災頻度が高くなり、その場合は、イレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が増加する可能性があります。

気候変動対応に関連する主なリスクと機会

1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ下における環境の変化から、発生する可能性のある事業リスクと機会を抽出し、推測される財務への影響度について検討を行いました。その結果、当社の経営に大きく影響を及ぼす可能性があると推測されるものが次表となります。
シナリオ分析から、当社の事業は、気候変動に関連した社会変化、市場変化に部分的に影響を受ける反面、再生可能エネルギー関連製品の市場拡大など事業機会も大きいことがわかりました。当社では、本分析において、経営の持続可能性と発展のためには、今後の事業環境を見極めつつ迅速な対応を行っていく必要があると評価しています。
次表のように影響の可能性はさまざまですが、当社は企業価値を最大化すべく可能な取り組みを適切に実施いたします。
なお、ここでの「短期」「中期」「長期」とは、「短期」は直近1年~ 3年程度、「中期」は4年~10年程度、「長期」は11年~約20年程度と定めています。また、リスク分類は国際的に推奨されるガイダンスに沿って行っています。

財務に影響が大きいと考えられるリスク

出現時期

主な取り組み方針

市場リスク

電気自動車の普及が進み、従来のエンジン周りの部品や給油口周りの部品など、ガソリン車特有の構造に関する機能部品が徐々に少なくなる可能性がある。

中~長期

  • 市場の縮小に合わせた適切な資源配分の実施

  • 電動化技術への対応製品の企画と開発

  • 新たな事業を創出する

  • 「環境」「安全」「快適」の普遍的要素の中で、電動化に重点を置いた製品戦略の推進

異業種からの自動車業界への参入が増え、異業種に納入していたメガサプライヤーなどが新たに競争相手となる可能性がある。

中~長期

  • 独自の技術を有し、活用し、競争力を高める

  • 必要に応じて、他社との提携、CVC、M&A等を活用し、強みを補完する

  • 新たな事業を創出する

  • 「環境」「安全」「快適」の普遍的要素に重点を置いた製品戦略の推進と既存製品群の競争力向上

顧客からの再生原材料(バイオマスプラスチックなど)の使用要求に対し、適時適切な対応ができないことによる売上の減少および調達コストが上昇する可能性がある。

短~長期

  • 新規材料の研究開発

  • 非化石資源材料、リサイクルプラスチック材、天然資源を利用した材料の活用推進

  • 素材・工法・法規の変化点に留意した、お客様要望への即応対応のブラッシュアップ

  • 再生材・バイオマスプラスチックを採用した製品の仕様を満足する製品形状と工法の開発

市場リスク/
技術リスク

CO2排出量を抑えた代替製品の出現により既存&新興カーメーカーでのニフコの商圏が減少する可能性がある。

短~長期

  • 素材・工法・法規の変化点に留意した、お客様要望への即応対応のブラッシュアップ

  • 新たな事業を創出する

  • 環境変化を分析したうえでのプロアクティブな提案

  • 「環境」「安全」「快適」の普遍的要素に重点を置いた製品戦略の推進と既存製品群の競争力向上

急性リスク

暴風雨、雪、凍結等の気候の激甚化によりサプライチェーンの断絶が起こる可能性が高まり、それによって引き起こされる材料調達不足による顧客への供給リスク回避のために、高価な材料購入および輸送費負担が増加する可能性がある。

短~長期

  • 複数の調達ルートや同等品の確保

  • 気象予測を組み込んだ原材料調達

財務に影響が大きいと考えられる機会

出現時期

主な取り組み方針

市場/製品/
サービス

CO2排出量削減を目的とした、より軽量な車や、非ICE車、再生可能エネルギー使用の機会などが急拡大することにより、モーター、バッテリー、電池(全固体電池含む)、ブレーキ周りなど、特有の機能部品の需要が拡大する可能性がある。

短~長期

  • お客様ニーズの早期把握

  • お客様の要望へ即応するための素材・工法・法規等の情報や経験の蓄積

  • 先に主導権をとる必要があるため、迅速な機能部品の開発とリソースの投入

  • 「環境」「安全」「快適」の普遍的要素に重点を置いた商品戦略の推進

気候変動に対する緩和・適応へのレジリエンス

気候変動を緩和する1.5℃シナリオと気候変動が激しくなる4℃シナリオの2つのシナリオに対して当社の事業を分析した結果、市場、技術、急性リスクにおいて比較的影響度の高い課題が抽出されました。しかしながら、市場、技術リスクに対しては今後起こる市場の変化を常に把握し、迅速な判断を行っていき、また急性リスクに対しては事前の対策を行うならば、いずれも回避できるリスクであると考えられ、従って当社は気候変動に対して一定のレジリエンスを有していると判断しています。

事業活動を通じて排出されるCO2排出量の削減

  1. 当社から排出するCO2排出量削減
    次の3つの取り組みを行っていきます。

    ・当社の事業全体を通じてエネルギー使用のロスや無駄を洗い出し、それらを解消することによりエネルギー使用量を削減

    ・国内拠点、海外拠点ともに、化石資源を起源とした電力を再生可能エネルギー起源の電力に順次切り替え

    ・名古屋工場、相模原工場、NTEC※、ニフコ熊本、ニフコ北関東ではすでに太陽光発電機を導入し、自社における再生可能エネルギーの自家発電を行い、その電力を使用しており、今後もさらに導入拡大を検討
    ※Nifco Technology Development Centre /技術開発センター

  2. サプライチェーンにおけるCO2排出量削減
    サプライヤーによるCO2排出量削減に関しては、現在取り組み方法を協議中です。

リスク管理

気候変動に関することを含むサステナビリティ全般における事項は、取締役会を通じて、当社のグループの損失危機の管理を行うリスクマネジメント委員会に指示・報告されます。同委員会では、指示・報告されたリスクに対し、事前予防策の検討、実施の管理を行います。
また、リスク事項によっては、取締役会より直接に或いは経営会議を通じて、関係する執行役員に指示が行われます。

指標と目標

  1. リスク・機会の管理に必要な指標と目標
    リスクや事業機会の管理に必要な指標、目標値は、それぞれのリスクや機会への対応策決定後に設定する予定です。

  2. CO2排出量の削減に関する指標と目標
    SBT目標設定支援事業への参加企業として、2℃シナリオの中期目標を掲げていますが、最新の動向である1.5℃シナリオへの移行が重要であるとの認識の下、現在、新たなるCO2排出量削減目標を検討中です。直近3か年の国内単体のCO2排出量は以下の通りです。