開催日:2025年9月2日
柴尾 雅春 代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)
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村中 誠 開発本部 基盤技術部 要素開発課 シニアエキスパート 2010年入社
稲葉 藍子 開発本部 基盤技術部 知的財産課 エキスパート 2004年入社
石川 泰成 開発本部 ADAS商品開発Unit 1課 エキスパート 2012年入社
ニフコらしい価値を社会に届けるために、
いかに“アイデア”を“カタチ”にするか?
ニフコは、「“アイデア”を“カタチ”にする会社」という長期ビジョンのもと、企業としての持続的な成長を目指すとともに、社会課題の解決につながる製品開発に取り組んでいます。その源泉となるのは、独創的な技術であり、それを担う技術者たち。ニフコの技術者はどのような想いを抱いて、“アイデア”を“カタチ”にしようとしているのか? 要素開発、知的財産部門、商品設計の3人が集い、社長の柴尾を交えて語り合いました。
学生時代、たまたまニフコの樹脂製品に触れる機会があり、
そのユニークさに惚れ込んで入社したのです。
始めに、ニフコでどんなキャリアを積んできたのか教えてください。
稲葉 私が入社して最初に配属になったのは先行開発部門です。そこで数年間、主にダンパーなどの先行開発で経験を積みました。次に異動したのは量産品ダンパーの開発部門で、その後、商品設計部門に移って自動車部品を担当。入社16年目の2019年に、現在の知的財産部門に異動し、開発品の特許出願などに携わっています。
村中 私はキャリア入社なのですが、入社後は稲葉さんと同じように先行開発部門や量産品ダンパーの開発に携わりました。その後、再び先行開発部門に戻り、入社11年目の2021年に現在の基盤技術部に異動し、機能性材料などの要素開発に取り組んでいます。したがって、私の場合、ほぼ開発部門一筋というキャリアですね。
石川 私は、村中さんとは対照的に商品設計一筋なんです。少し変わった経験というと、入社11年目に1年間ほど海外トレーニーとしてNifco Poland Sp. z o. o.にいたことがあります。現在は、ADAS(先進運転支援システム)関連商品の設計グループリーダーとして、開発グループメンバーのサポートや顧客窓口などの業務に携わっています。
ところで稲葉さんは、どういう理由で商品設計から知的財産部門に異動したのですか?
稲葉 自分から希望したんです。商品設計の技術者だった時に特許出願などで知的財産部門と関わることがあったのですが、どうも連携が上手くいっていないような気がしたのです。そこで自分なりの経験を生かして、新しい関係づくりができればよいかなと。技術者として視点を変えてみたいという気持ちもありましたね。
私は村中さんにお聞きしたいのですけれど、キャリア入社ということですが、どういう理由でニフコに惹かれたのですか?
村中 私は学生時代に化学系の研究に取り組んでいて、博士課程まで大学に在籍していました。そして就職を考えたとき、化学メーカーよりも、ニフコのようなユニークな会社を選んだ方が活躍できるチャンスがたくさんあって、人生が楽しくなるんじゃないかと思ったんですね。稲葉さんの場合はどうでしたか?
稲葉 もうずっと前のことで記憶も曖昧なのですが(笑)。大学の研究室の先輩がたまたまニフコにいたというのがきっかけですね。とはいっても専攻は機械工学だったので、当時としては珍しかったと思います。
私自身、技術者としてニフコに入社した。
振り返っても、幸せなキャリアを歩んできたと思いますね。
柴尾さんも技術者としてキャリアをスタートしたのですよね。
柴尾 そうですね。入社してから15年間、自動車メーカーを顧客とした商品設計に携わっていました。当時は、現在のように部門の役割も明確ではなかったので泥臭いこともたくさんありましたが、楽しかったですよ。ところが、ずっと商品設計に関わっていると、違うことにも挑戦したいという想いも出てきて変化を求めるようになりました。そのタイミングでスペインに赴任することになり、ここから経営に関わるようになります。その後、少し日本に戻る期間があって、そしてアメリカに行き、Nifco Americaで社長を務めることになった。この日本に戻っていた間は、稲葉さんと一緒に仕事をしていますよね。
稲葉 そう、当時の技術開発部長が柴尾さんでした。いつでもポジティブで、技術者たちの背中を押してくれる上司でしたね。ところで、柴尾さんはなぜニフコに?
柴尾 入社理由か(笑)。私も大学では精密機械を勉強していて、樹脂には縁遠かったんですよね。ところが、たまたま大学のリクルーターからニフコを紹介されて、ニフコの弾性に富んだ樹脂製品を触って、石川さんと同じように惚れ込んだんです。大学の同期の多くは、金属関係や機械メーカーなど名だたる大企業に就職しました。でも、自分で言うのもなんですけれども、私が一番幸せなキャリアを歩んでいるように感じますね。
ニフコの技術者は信念を持っている人が多い。
「よいものをつくってやろう」という想いが伝わってきます。
「これぞニフコ!」という唯一無二の強みをあげるとするならば?
稲葉 やはり技術力でしょうね。突き詰めれば、それを支える「人」にこそニフコの強みがあると感じています。ニフコの技術者たちは信念を持っている人が多い。「なんかできればいいや」ではなくて、「絶対によいものをつくってやろう」という熱い気持ちが伝わってきます。
村中 技術者の裁量が大きいこともあって、自分の得意な領域にとことんこだわる、尖った技術者が多いイメージです。「ダンパーなら○○さん」、「アイデア図なら△△さん」みたいに、その専門分野に秀でた技術者が社内にたくさんいますよね。もちろん、お客様に寄り添うということがその大前提となりますけれども。
稲葉 特許出願の打ち合わせなどをしていても、誰もがみんな熱く技術を語るんです。特許に直接関係ないような領域まですごい熱量で(笑)。
石川 そのこだわりは、お客様への提案力や課題解決力にも表れていますよね。要望されたものをただつくるのではなく、もっとよいものをつくってやろう、新しい付加価値をつけてみよう、みたいなところがあります。ですから、同じ要望に対しても、技術者によって設計する製品が違ってくることもあります。
柴尾 それがニフコの強みであり、弱点でもあるわけです(笑)。
石川 私もそれは感じています(笑)。
なぜ、弱点なのでしょうか?
柴尾 みんな独創的であると同時に、いわゆる「二番煎じ」が嫌いなんですよ。そのために、ある意味、スタンダード的な技術が確立しにくい。せっかく素晴らしい技術を開発したのに、それを引き継ぐ技術者が少ないために、他社に追随されてしまうことがよくあるように思います。
稲葉 確かに、唯一無二のものをつくってやろうという想いは強いですよね。
柴尾 でも、それが今言ったように、ニフコの強みでもあるわけです。「こういう提案を待っていたんだよ」といった声をよく聞きますし、それを期待しているニフコの根強いファンがお客様の中にはたくさんいますよね。
稲葉 弱点ということでは、情報共有がちょっと苦手なこともあげられると思いますが……。
村中 いわゆる「個人商店」的になりがちですよね。そこを連携させて「ニフコ商店街」のようになれば、もっと強みが発揮されると感じています。
石川 効率化ということではどうでしょうか? 確かに業務効率は大切ですが、それを意識し過ぎると手堅いやり方になってチャレンジが少なくなる。最近、マネージャー的な立場になったので、このバランスでよく悩むんです。
柴尾 独創的であること、チャレンジングであることは、ニフコにとって企業文化のようなものですからね。それがよい方向に向かっているのであれば、効率よりもチャレンジに重きを置いてもいいんじゃないかな。経営者としてはあまり模範的なアドバイスとはいえないかもしれませんが(笑)。
石川 「効率もチャレンジもどっちも大切」と言われるのかと思っていました。
樹脂の特性を最大限に発揮させ、ユニークな機能を実現する。
そこにこそ、ニフコの独創力が息づく。
「ニフコらしい」と聞いて、どんな製品を思い浮かべますか?
石川 あえてあげるとするならば、独自のNV(振動・騒音)低減技術を用いた自動車用の樹脂製品でしょうか。NVや空力、さらには環境といった課題は、自動車にとって普遍的なテーマだと思います。その解決に向けて、コストをかけずに、独創の技術と樹脂の特性を活かしてチャレンジしている。まさにニフコらしい製品ですよね。他の領域でもこうした製品が出てこないかと楽しみにしていると同時に、私も頑張らなくてはと刺激を受けています。
稲葉 今、石川さんが挙げた空力も自動車の環境性能に影響を及ぼす技術であり、ニフコはこの分野でも独自の特許を数多く取得しています。それらをどう活用し、他社と差別化していくかがこれからの課題だと感じています。
村中 NVにしろ、空力にしろ、最先端の製品を設計していくためには、ニーズや性能を可視化していくことが重要です。メカニズムの解明ですね。そこに、私たち要素開発の技術者の役割がある。社会の要請に応じてすぐに製品開発にチャレンジできるように、今後もさらに環境を整えていきたいと思っています。
柴尾さんは、注目している製品はありますか?
柴尾 具体的な製品は思い浮かばないのですが、ユーザーにとって普遍性の価値を有する製品ですね。それと格好のよい機能美を有した製品です。美しい製品は機能も優れています。
かなり前の話ですが一時期、メカトロ技術が注目され、ニフコでも樹脂機構技術に電動技術を組み合わせた製品を顧客にアピールしました。ところが、お客様には不評なわけです。「何を提案してきているんだ?私たちはこんな安易な解決方法での製品をニフコに期待しているわけではない」と。改めてお客様の期待、ニフコならではの強みを再認識させられました。確かに、電動技術を使えば簡単に機構製品はできます。しかし、樹脂の特性を最大限に発揮させてユニークな機能を追求するところに、ニフコの独創力がある。電動技術を使わないで実現できれば、自動車の環境性能にも貢献するわけですからね。
今日のこの集まりがきっかけとなって、
ニフコに新しい風が巻き起こってくれれば楽しい。
よい機会なので、みんなで話し合ってみたいテーマはありますか?
村中 では、私から一つ。今日集まったメンバーのように、知的財産や設計、要素開発といった別々の部門がもっと密接に連携して新しいチャレンジができる仕組みをつくったら面白いと思うのですが、どうでしょう?
稲葉 すごく魅力的な提案だと思いますね。知的財産でいうと、設計とは比較的やりとりが多いのですが、要素開発や資材・調達といった部門との連携は現状では少ない。知的財産を軸に複数の部門が直接話し合ったり情報を共有したりできる仕組みを構築できれば、より効果的な知的財産戦略を進めていけると思います。
石川 「知的財産の目線で考えると……」みたいな意見を、設計や要素開発のメンバーも交えた場でみんなでぶつけあえば、また違う独創力が育まれてくるはずです。
柴尾 今、3人が話しているように、部門の枠組みを越えてもっと気軽に技術者たちが議論できる場をつくれたら面白いですよね。そこを起点に連携を広げることができれば、ニフコの新しい企業文化がそこから生まれるかもしれない。今日の集まりがそのきっかけになるといいなと思っています。
時代がどんなに変化しようとも、
社会に普遍的な価値を届ける会社であり続けてほしい。
皆さんから、柴尾さんにぜひ聞きたいことはありますか?
石川 そうですね。経営者としてニフコの技術者はどんなマインドを大切にすべきだと考えていますか?
柴尾 これは私が機会あるごとに話していることですが、お客様や社会への目線を忘れないでほしいということですね。技術を深掘りしていくのは大切ですが、その先にお客様がいることを常に意識してほしい。それがないと、どんなに素晴らしい技術を開発しても自己満足で終わってしまう。逆の意味でいうならば、お客様との距離が近いことがニフコで技術者として働く楽しさなのだと思っています。
村中 私からも一つ聞きたいのですが、柴尾さんの“ニフコ人生”の中で一番モチベーションが上がったのはどんな時だったのでしょうか?
柴尾 うーん、むずかしい質問だな。まず技術者としては3つあると思いますね。一つ目は、うんうん唸りながら苦労して描いた設計図面が完成した時ですよね。次に、試作品ができて、その設計図が“モノ”として形になった時。そして、やがてその製品が量産されて、お客様の工場で山積みになっている様子を見届ける時です。
マネジメント的な場面でいうと、私はメンバーたちと一緒に逆境に立ち向かっていくような時に一番テンションが上がるんですね。スペインにあったグループ会社に赴任した当時、たいへんな状況だったのです。それを従業員たちと一緒になって必死に立て直していった。その会社を離れて帰国する時は、もう自分がこんなに燃え尽きるような経験は二度とないだろうなと思いました。ところが、その後に行ったアメリカでも、同じような状況に直面して。私は、ニフコでこんな幸せな経験を2回もしているんです(笑)。
では最後に、柴尾さんからニフコの社員たちへのメッセージを。
柴尾 これも最近よく話していることではあるのですが、会社は一人の力では成り立たないんですよね。みんなの力が一つになってこそ持続的な成長が可能となり、社員一人ひとりの成長があるわけです。だから、自分の仕事に向き合うばかりでなく、もう一段高い視点に立って、まわりを見渡してほしい。そうすれば、さっき話題になった技術者たちの連携もおのずと生まれてくるのではないでしょうか。仕事を存分に楽しみながら、もう一歩踏み込んでほしいと思っています。
最後に事業寄りの話をすると、私は「環境」「安全」「快適」という3つのキーワードをずっと挙げています。こうした言葉は社会の動きとともに変わっていくかもしれませんが、ニフコは、どんな時代においても社会や暮らしに向けて普遍的な価値を提供する会社であり続けるべきだと思っています。









